※※ フィクションです ※※
みどりは、福岡到着してから妙にそわそわし始めた。ホテルは駅の近くのクラウンプラザにしたけれど、荷物を置いて、すぐに出かけようとしている。何回もスマホを見てやりとりしている。そわそわして楽しそうで、鼻歌も歌っている。
「こうちゃん、わたし、ここよくわかんないから、迎えに来てもらう。ゴスペルの友達。最上さんっていうんだけど、こうちゃん、一応あいさつする?どっちでもいいけど。」
「うーん、どれくらいで来るの?俺も3時半に駅のあたりで待ち合わせ。タイミング合うかな。」
「うん、もう駅のそばにいるみたい。歩いてすぐだよね、ここ。もうすぐ来るって。ロビーであいさつしてよ、一応。住まいは越谷、で、出身がやめ?というところなんだって。」
「あー、八女茶のやめか。うん。お世話になるしね。じゃ、行こうか。今日、もう、夜ご飯も別々だから、鍵。はい。これ、なくさないでよ。部屋番号は、どうしよう?スマホで写メっておいて。念の為。」
「さっすがー。旅慣れてるね、こうちゃん。はー、たくさん旅してメンバーカード持ってる人はちがうねっ!」
とみどりが茶化して言った。よく見ると、みどりは来るときよりも化粧が濃くなっている。はりきってるな。いつもこれくらいにしてたら、まんざらじゃないのに。俺もそろそろヤブローさんと待ち合わせの時間が近づいてきたので、急がなきゃ。一緒にロビーに下りて行った。
そこに立っていたのは、30歳くらいの長身のイケメンだった。さわやかで、とても雨乞いをやるように見えないし、マイラーにはこんなさわやかな人はいない。くぅさんも負けるくらいのイケメン度。松坂桃李をもう少し整えた感じ。身長も185はありそう。こんなにイケメンなら、みどりが、そわそわするのもわかる気がする。へー、こんなイケメンがみどりの相手をしてくれるなんて、ゴスペルも捨てたもんじゃないな。やっぱり賛成しておいてよかったよ。
「もがみです。はじめまして。いつもシス・グリーン、あ、奥さまにはお世話になっています。この週末は、わざわざ福岡までありがとうございます。」
「いえ、こちらこそお世話になります。家内は福岡初めてなので、足手まといかもしれませんが、よろしくお願いいたします。」
「ちゃんと、案内させていだだきます。ご安心下さい。」
とあいさつしてみたものの、なんだ、シス・グリーンって?エアコンかトイレにある手洗い石鹸の名前みたいだな。なんだろう?ニックネーム?いじめ?うーん、わからないけれど、やばい、俺も急がないと、ヤブローさんを待たせちゃう。
「では、最上さん、あいさつも丁寧にしないまま失礼しますが、うちのをよろしくお願いします。時間があるので、先に失礼します。」
会釈をして小走りで、約束のデイトスに向かった。待ち合わせはカウンター席のこぎれいなバル。ヤブローさんはすでに飲み始めていた。
「久しぶり。KUL以来ですよね。あの時はほんと災難でしたね。ははは。カンパイしましょう。」
「いやー、ちょっときつく言ってしまって大人げないかなとは思ったんですが。いずれにせよ、ヤブローさんたちと知り合いになれてよかったです。」
「すみません。今日は時間1時間半くらいしかないのですが、お礼と報告もあって。」
「はぁ?お礼?」
「メッセした、キルトのドームの。あれ、ホント、誰も行かなかったらフランもがっかりしていたと思うのにあかあおさんのおかげで。」
「いえいえ、なんで、そんな、ヤブローさんがお礼言うのですか?なんかあるんすか?ふふふ。」
とちょっと茶化してみた。
「いや、俺はほんと嫁ラブなんで、この間言ったみたいに。良い友達ですよ。全然やらしいことがない旅友です。ほんと手をつないだりはしても、それだけ。百歩譲って、一緒に寝てもなにもないですよ。友達ががっかりするのいやでしょう?フランは、屈託ないから、がっかりしちゃうと悲しそうになるのよ。それ嫌なんですよね。
あと、マイラーさんたちって軽く約束して、実際は知らん顔とかあるでしょう。俺、結構そういうの嫌いなんですよ。そこらへん、あかあおさん、ちがうなーと。」
「あ、適当に頼んでますけれど、なにか食べたいものがあれば遠慮なく。今日はお礼で俺がここ払いますから。」
「いやいや、そんな。」
「まあまあ。それに、マイラーって軽い付き合いのくせに、意味なくやたらつっこんできたり、個人情報をやたら暴こうとするでしょ。あいつらって、普段の生活でも平気で他人の財布のぞいたりするのかな?そういう勢いあるよね。しつこくしてきたり。距離感わからない、何様?みたいなの。あ、そう言えば、あのあと、あかあおさん、大丈夫でした?」
「あー、掲示板は書かれてますね。けうけむさん、何人分かのIDで書いているみたい。まあ、スマホ複数使いや、IP変えたとしても、彼女だけではないみたいなので、のっかてるひともいるんでしょうね。気にしていませんが。それより、会社に、お問い合わせ通じて告発?みたいなの来ましたよ。たぶん、IPで彼女だと思うんですけれどね。口ひげ指摘を根に持ってるみたいで。ハラスメントだと。ハラスメントの意味や使い方わからないみたいなのに、なんでもこじつければいいと思っているみたい。あれ、あのまま、言わないでいたら、あの口ひげどこまで伸びたんでしょうね。ははは。」
「そっか。しつこいな。でも、まあ、気にしないことですね。所詮、たいしたことできませんから。」
「はい、気にしてませんよ。そういうことがあるっていうだけで。会社に対して続くようなら法務に相談するだけですしね。」
「おっ。さすが割り切ってますね。どうすか、もう一杯、同じのでいいですか?」
「あ、ありがとうございます。」
「それでね、あの、ラウンジにいたやつ覚えてます?あの一人がユーチューバーなんですけれど。」
「ああ、言ってましたね。ヤブローさん。全然面白くないユーチューバーって。」
「うん。その件で報告あるんですよ。たぶんあかあおさんはFFじゃないけれど…。あいつ、トラザンってネームなんだけど、あいつね…。」
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