賛否両論、砂原浩次シリーズお読みいただきありがとうございます。
よく頂くご意見は
「本当にありそうでオカルト」
「だれがモデルですか?」
「書いているさんだばASD(自閉症スペクトラム)か統失じゃね」
「何が面白いかわからない」
というのがあります。面白い面白くないは感性の問題なので、いかにもしようがないですが、「モデルがいますか?」は「フィクションです」としかお答えできず、それではつまらないので、ここに、登場人物のクロニクルをSS(ショートストーリー)的に書いてみようかと思います。その人の歴史をたどり、どうしてこうなって砂原浩次に登場することになったのか。
暇なお時間にでもお読みくださいな。
初回は、なんと言っても性格の悪さが際立つ「けうけむ」さんです。
ウチのリアル名前は坂元紗緒璃。母がリエという名前で画数が少なくて子供の頃バカにされたから、音がキレイでなるべく画数が多くなるように名づけたらしい。まわりは、さおりんと呼ぶ人が多い。元彼からはさーたんって呼ばれていた。
小さいころは名前を漢字で書くのが大変で、本当に困った。簡単な名前の人はすぐに書けるようになるけれど、ウチだけなかなか書けずにくやしい思いをしたことを思いだす。中受の時も名前を書くだけでも人より3秒くらい多くかかる気がするからちょっと損した気分になった。
3人兄弟の真ん中。男女男。お兄ちゃんと弟とはそれぞれ7歳ずつ離れている。だから、弟はまだ高校生。
ふつう3人子供がいて、女の子一人だとかわいがられるだろうけれど、両親ともに男の子、跡継ぎに夢中で、女の子はどうでもいいみたいで、あまり手をかけて育ててもらった記憶ないなぁ。その甲斐あってか、お兄ちゃんは東大から総務省に。たぶん遠くないうちに、父親の地盤である茨城に行くんだと思う。弟は正直言うと勉強できるほうではないから、日本の社長の出身大学といえば名前が上がる学校の付属で内進がやっとというカンジみたい。お兄ちゃんとは仲良いけれど、弟とはあまり共通の話題もなくて仲良くないし、あまり話さないからよく知らない。
お兄ちゃんはめちゃウチにやさしい。リエよりもやさしいし、いろいろ気にかけてくれているかも。
この間、相談された、あら捜しのスクショけんかももうやめとけ。時間の無駄だよ。人のあら捜しをするためになにか一つを必死に掴むよりも残りの99%で折り合うことも考えてごらん。さおりはその頭もあるんだから、あまりななめに構えないで。いつも応援してる。
って、つい先日の福岡での出来事を報告したら、やさしい返信がきた。やっぱりお兄ちゃん大好き。やっぱり年上が好き。
お兄ちゃんの言うとおりにしたほうが生きやすいのわかるし、そうしたい。けれど、空旅行の世界では、それをやっていたらどこかで寝首をかかれる。この3年でそれをしみじみ感じているよ。お兄ちゃん。だからスクショもやめないし、けうけむはけうけむでいるよ。
子供のころは神経質な子供で良くいじめられた。すぐにお腹痛くなった。いつもお腹をこわして、がりがりに痩せていた。でも中受対策を始めた頃からお腹痛くなくなって、ちょっとずつ太り始めた。勉強は正直いうと簡単だった。ある程度勉強量を増やせば楽勝だった。それで、自信がついたからお腹も治ったみたい。志望校はSFCにして、おばあの家がある藤沢に住所を移した。よほど失敗しなければ合格するだろうから、一本受験で臨んだ。もちろん合格。6年間、おばあの家から通って、いつも「食べろ、食べろ」というのでどんどん食べたらどんどん太った。
学校はいろいろな背景の子がいるから気にしないでよくて、あまり目立たず、自分らしくいられて、はじめは快適だった。どちらかというと陰キャ。帰国子女が茨城よりもずっと多かったから、そこで海外や航空旅行に興味を持つようになった。かといって、特に交換留学をしたりもせず、本当に目立たない陰キャだった。
でも、高3の春に彼氏が出来たらちょっと様相が変わった。もう少しで卒業なのに。その彼が、学校でもそこそこ有名で人気のある1年先輩で、当時はSFCに進んでいた長身イケメン純くんだったから波乱が始まった。向こうから告白してきたので学校新聞レベルの大ニュースが駆け巡った。おかげで目立たないさおりんが全校レベルで知られるようになっちゃった。
純くんは長身イケメン、花より男子でいうならF4にいるカンジ。その人と付き合うなんて、宝くじに当たった気分だった。お家も良くて代々商社にお勤め、あるいはお役人。純くんもアメリカ・テキサス・ヒューストン帰りの帰国子女。そんな人と、茨城出身のさおりんがつきあうなんて。
でも良いことばかりではない。人に注目されてしまったから、嫉妬もこういうものかと身をもって体験した。
嫉妬は怖いもので、学校で、美人と言われる人や、華がある人が一斉にウチを攻撃してきた。在校生、卒業生、外部進学組、3種がひとつになって攻撃してきた。ウチは何もかわっていないのに、純くんと付き合い始めたというだけで、ウチを取り巻く環境は一変した。裏掲示板でありもしない悪口を言われるのは当たり前、SFC豚とニックネームをつけられて、豚のイラストのLINEスタンプまで作られててバカにされた。強がりじゃなくて、そのイラストはかわいかったから今でも使っている。
もともと仲良かった陰キャも手のひら返しに華美人軍団の傘下に入った。
実際は、その華美人組よりもその人の取り巻きが実働部隊としていろいろやっていたみたい。そのやり方は、卑劣だと思ったけれど、人海戦術としてはアリだな、と妙に感心。それは今でも生きている。ぱろんさんとかね。
華美人組はウチがいる目の前でも、純くんにべたべた寄ってきて、一生懸命誘いをかけている人も一人や二人じゃなかった。でも、純くんは全然気にしないし、他の誰かとつきあっている様子もなかった。存在を無視して、ウチとの時間を大切にしてくれた。
デートはとにかくよく食べに行った。純くんのバイト代はウチの胃袋に飲みこまれたんじゃないかと思うよ。当然ウチはどんどん太った。
でもそれでは純くんに釣り合わないと思ったから、一度ダイエットを内緒ではじめてみたら、純くんに激オコされた。
「さーたんは、そのままでいて。もっと太ってもいいくらい。もっと食べて。食べて。ダイエットするくらいなら別れるから。容姿が気になるなら、髪の毛をサラサラにして、あとは肌をきれいにするようにだけして。ダイエットは大敵!」
いつになく純くんが怒ったので、ダイエットは中止して、栄養価の高いものを食べた。ヘアケア用品とスキンケアだけはウチなりに気を付けてやるようにした。純くんはイベントサークルにも在籍したから、キャンペーン案件のコスメももらってきてくれて、それで一生懸命ケアした。
おかげで無事SFC豚はどんどん立派な豚になった。ウチがどんどん太るから、純くんとウチのことはSFCの3大オカルトの1つになった。3大オカルトになる頃には、嫉妬も収まってきて、安心してストレスもなくなったので、食べた分だけ太り、純くんはとてもうれしそうだった。
無事、内進も決まり、4月からは一緒の大学生だね、と、お祝いしようと、珍しく都心に二人で出かけていくことになった。
「今日は、お祝い。突然なんだけれど、大切な友達に紹介もしたいんだ。二人で食事をしたあとに。さーたんのこと友達に会わせたいんだ。いいかな?学内の友達とは異なる友達。大切な、一生を通じて付き合っていく友達がいるんだ。」
と尋ねられて、なにか認められた気になったからすぐに
「もちろん!」
と答えた。すると、純くんは、
「友達はみんな未成年じゃなくてお酒飲むけれど、二人ともまだ未成年だからアルコールは絶対NGね。すすめてくる人もいないと思うけれど、そこは気をつけようね。僕も本当にそういう不祥事は気を付けているから。それで、服は、さーたん、いつも、地味だから今日はドレスに着替えて、友達に会う前に、ヘアメイクもしてもらってから行こう。」
と言った。それを言われた小田急線がシンデレラのかぼちゃの馬車のように感じた。すごい夢みたい。もしかしたら、今夜は純くんとの関係もまた一歩進むのかな?ちょっと期待しちゃう。夢物語みたい。一生を通じて付き合っていく友達に紹介されるなんて。
※※フィクションです※※
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