砂原SS 私以外私じゃないの けうけむクロニクル(2)

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ヘアメイクはしっかり予約してあって、着替えるものは、びっくりしたことに下着まで用意されていた。二人は清い関係で、手をつないで、ハグキスする程度のライトなものなのに、どうしてサイズがわかったか不思議。ブラのサイズもぴったりのものだった。用意されていた服はシフォンのドレス。ほとんどパンツが多いから足をだすことはなかったのに、ちょうどひざが隠れるくらいの丈でちょっと気恥ずかしかった。

「うん。すごくいいね。思った通りだ。さーたん、とっても似合う。すごくいいよ!!やっぱり僕のさーたんは、いい。絶対ダイエットしちゃだめだよ。前言った通りヘアケアとスキンケア一生懸命やってくれているから、ヘアメイクがすごく映えるよ。いい、めっちゃいい!」

と目の前にいる長身イケメンがべたぼめしてくれた。おそるおそる鏡をのぞいてみると、確かに今までのじぶんとはちがう自分が鏡の中にいた。

「へー、メイクするとこうなるんだ。」

とまんざらなものではないと満足した。でも、やっぱり、今の体型よりも、ダイエットして、もう少し、純くんに似合うほうが良いのではないかと心の中のゴーストが叫んでいた。

大切なお友達は、新宿の高層ホテルのスイートルームで待っていてくれていた。エクスクルーシブ感の高い廊下を越え、プライベートなエレベータで上がる部屋はモノトーンと木目のやさしいブラウンが程よく調和しているものだった。

薄暗く設定している照明のもとでは、個々の顔はわからないけれど、人数は10人くらいいた。

「あ。じゅんくん。あっ。こちらが彼女さん?あの彼女さん?」

と入室するやいなや3人ほどが寄ってきた。純くんはうれしそうに

「はい。やっと、内進が決まったので。もういいかなと思って。僕の大切なさーたんです。」

と答えた。

『大切なさーたん』と言われうれしかったことは今でもウチの輝いた想い出のひとつ。

暗さに目が慣れると、部屋にいる人が男女カップルでいることがわかった。その中で男性がウチを囲んで、なめまわすような視線を投げた。

「うわー。やっとお目にかかることができたー。じゅんくんがおネツになるのわかる。うらやましい。まだ10代なんでしょう?」

「すごいね。魅力がハンパない。髪の毛もつやつや。」

「肌もきれいだね。しみやニキビもない。すごいすごい。」

という声が聞こえてきた。

「ぼくたちは未成年ですから、ジュースかお茶で。僕はスパークリングウォーターにします。」

と言い、ウチを見たので、しぼりたてのオレンジジュースをいただくことにした。のどがかわいていたこともあり、ごくごくと飲み干してしまった。すると一同

「良い飲みっぷりだね。さーたん、いいね。さーたん。」

と言われて、ちょっとくすぐったい気分になった。

その後は、政治経済の話、経営の話などを男性がしていた。女性は、あまり会話に加わることはなく、ニコニコ座っているだけだった。

小一時間いて、純くんが、

「遠くから来ているのでそろそろ帰ります。」

と言い、帰ることになった。

その大切なお友達の会は月いちのペースで実施されていた。新宿のあとは、恵比寿、赤坂、横浜、京都まで足を伸ばすこともあり、六本木、お台場と続いた。すごく豪華なレストランの時もあったけれど、ほとんどがホテル。京都は日帰りだったけれど、とても楽しかった。いずれの場所もなかなか足を踏み入れることができる場所ではない。

ちょっとした興味でその部屋がいくらぐらいするものなのかググってみた。びっくりした。学生には無理。自分のお小遣いでは絶対無理。そんなところに連れて行って、雰囲気を味わうことができるのは、純くんのおかげかも。なんだかすごい人に好かれちゃったなぁとちょっと誇らしくもあった。きっとこのまま仲良く続いていくのかなとも思った。

しかし、それは恋愛ではないということをじきに知ることになる。お台場の次の品川のホテルでの出来事だった。もう大学生になっていてもうすぐ1年も修了、ずっと、勉強、バイトをハードにこなしながらも純くんの「痩せたら絶対ダメ」という言葉には従って、ちゃんと体型キープはしていた。もちろん、スキンケア・ヘアケアは時間をかけていた。

純くんの大切なお友達は男性は毎回同じ顔ぶれだったけれど、女性はたまに入れ替わりがあった。その入れ替わらない方のメンバーは顔なじみになって、男性が話をしている時に、寄り合って、こそこそ話をするようになった。

「さーたん、スキンケア何つかってるの?」

「A社のものを使っています。純くんの先輩が分けてくれるからせっせと使っています♪」

「いいなぁ。うちのダーもいつもさーたんを褒めている。純くんもさーたんを一生懸命ケアしているよね。これこそ飼育ぅ~。」

「え、飼育?」

「そう。飼育。あ、あれ、あれ。さーたん、この会、あ、あれ?」

「聞いてないんじゃないかな。あれ、ねぇねぇ、ゆぅたん。ゆぅたんわたしは始めから聞いていたけれど、さーたんは聞いてないんじゃないの?」

「え、聞いてないって?飼育?って?」

「うーん、言っちゃっていいのかな?るるたん、どう思う?」

「うーん。ゆぅたん、言ってよ。私が、言って、ダーに怒られても困るしぃ。」

なんだろう、ゆぅたんもるるたんも急に口ごもってる。飼育ってなにかな?あれ、よく見ると、今まであまり近くで話したことなかったから気づかなかったけれど、みんな結構ぼちゃ系。

「わたしが言うよ。あとで、JGC 飼育 ジャパンジェントルメンってぐぐってみて。それでわかるよ。」

と、ゆぅたんでもるるたんでもない、話をちょい聞きしていたうーたんが言った。

それをググってみると何か崩壊しちゃいそうで怖かったけれど、帰りの電車でググってみた。すると、すぐにヒットしたホームページを見て愕然とした。

「なに、このJGCって?

※※フィクションです※※

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