砂原SS 私以外私じゃないの けうけむクロニクル(3)最終回

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JGC… ジャパン・ジェントルメンズ・サークル…?紳士たちのプリティウーマン自慢…?」 

なにこれ?よく読み進めると、要するに、ふくよか女性に指向性がある男性が、女性を大切に育てて、会合に同行して、その女性の状態を自慢し合い、愛でながら、政治経済・ビジネス話をする集い…?。

入会条件があり、規定のポイントを積み重ねて50ポイントにならないと入会できない?あるいは、会のオブザーブを80回する?はぁ?え?あとは、何?既存会員の推薦?

条件クリア大変そう。純くん、すごいな。

JGCはありがちな性的ないやらしさはまったくなく、違法なものもまったくなかった。ただ、嗜好性としてはあまり堂々と言えるものではない。ぶっちゃけて言うならば、清らかなデブ専サークル

すぐに、あの新宿のシフォンドレスの日の自分の画像を見つけることもできた。

SFC豚デビュー。全体的な肉付き、肌状態、ヘアケア万全。きれいに飼育されています。

とコメントされていた。

要するに、鯉や犬や牛や豚の品評会と同じ。法的にふれるものはなく、飼育具合を持ち寄って自慢する会。純くん、つまり、デブ専だから、そして、ウチが言われるがままにSFC豚になってるから、こうやって一緒にいたんだ…。だから、やましくない、法的にまずいことは一切やらないで、趣味を継続するということだったのか。

ここで、乙女だったら、「ひどい」って泣いて傷ついてみたり、純くんになにも言わないで距離をとるのだろうけれど、それは腹立たしい。

「ね。純くん、これ、ウチだよね。」

とSFC豚デビュー画像がアップされているページを見せた。

「あれ?良く見つけたね。でも残念。僕ずっと我慢して、豚飼育してること言わないで手をかけてきたのに、誰かに教えられちゃったの?ムカつくなぁ。ある日、サプライズで種明かししようと思ったのに。それは誰から聞いたの?入れ知恵した豚はもう出禁にするから。さーたんは僕のSFC豚だから。しばらくはこの調子でね。」

屈託ナッシング。そうか、ウチは豚だったのか。飼育豚か。少し言葉が見つからなかった。純くんはニコニコしている。

「さーたん、評判すごくいいんだよ。陰キャで余計なこと言わないし、言われた通り太り続けてくれるし、それでいてスキンケア・ヘアケア怠らないし。頭もいい。話も聞いていて理解しているし、たまにぽろっといいこと言う。あとお父さんも議員さんなんでしょ。ほどほどに素地もあっていいねって。みんな羨ましいって僕に言ってくる。」

「そうなの?評判いいの?ふーん・・・。純くん、純くんにとって、ウチって、なに?」

「なにって、さーたんでしょ。さーたんは、僕と付き合っているよ。僕のSFC豚。」

「えーっと、そういうことじゃなくて。なにかなって?」

「え?付き合ってるって言ってるよ。」

「えーっと、飼育って付き合うとか言わないでしょ?」

「ええっ?だって、僕はちゃんとさーたん、大切にしているし、いやな想いをさせないようにしているつもりだけれど。なにかまだ足りない?なにかストレスになる?ストレスは毛髪によくないから。言って、言って。肌の状態も悪くなる。だから気にくわないことは遠慮なく言って。」

「たとえば…付き合うと…将来とか・・・」

「ん?将来?なに?飼育の契約期間?とりあえず、期限は設定していない。一応、1年を区切りに考えればいいかなって。1月から12月で。その期限で。延長するかどうかは、お互い話し合って平和的に決めたい。だめかな?そのほうが重荷にならにかなーって。

あー、あれ、もしかして、さーたん、万が一の可能性で聞くけれど、将来って、あれ、ないと思うけれど、結婚とかそういうこと?」

「……」

「あー、それはない。ナイナイ。ははは。あれ、SFC高校からの知り合いだから知ってるかと思ったけれど、うちの家は、4代遡って、役人か商社で、父親が次男ででき悪くて商社だったから、うちは、分家商社なの。もう決まり。それで商社方面と言うことで、そこでのつながりの誰かの娘と結婚するっていうことになってるの。そのほうがうまく行くって。僕も就職は商社だよ。結婚相手候補はもう3人か4人しぼられている。みんな幼馴じみで商社マンの娘。そのうち一人はロンドンで生まれた病院も同じなんだよ。テキサスでもちょっとかぶってる。

僕、それほど頭よくないし、今から役人は無理だし。医者や司法ならワンチャンス下剋上あるかもしれないけれど、頭よくないからな無駄な努力になる。だから、商社。結婚相手も商社で駐妻になってもうまくやっていける娘ばっかり。結構めんどくさいみたいだけれど、感覚がわかるからね。

さーたんのおうちはお父様が一代目の議員さんでしょ。うーん、きっと反対されるな。結婚はないな。てか、さーたんに苦労かけちゃう。すると痩せちゃうだろうから、僕は絶対に嫌!!ぜったいにイヤ!

純くんはニコニコしながら続ける。

「それに、あくまでも豚飼育はぼくの趣味と嗜好だからなぁ。生活とは別というか。まあ、さーたん、豚飼育嗜好性を今、初めて知ったみたいだけれど、僕のこともっとわかってくれているのだと思った。いわゆる将来的な話はないということは知っているのだと思ったよ。」

「…」

「あれ、知らなかった?でも安心して!!不自由なく飼育するから。キラキラSFC豚でいてよ。性格も陰キャで余計なこと言わないし。僕、本当に、大切にするから。豚乗り換えもしないし。豚の宗派替えって呼ぶんだよ、それ。豚ステイタス、めちゃ、高いよ。さーたん。もう、ダイヤモンドレベル。このままいてくれるならライフタイム・ダイヤモンドにしてもいいよ。ほんと、出会えてよかった。僕満たされているよ。」

「わかった。」

あの時、ウチはどうして、怒ることが出来なかったんだろう。でも良いきっかけになった。男の人に夢中にはならない。ウチのやりたいことを優先する。同時にその後の生活設計を見直した。留学もした。あこがれていた旅行もたくさん行った。結局、狙ったマスコミ就活はうまくいかず、院進となったけれど、それなりに頑張ってきたと思う。卒業もして、院はちょっと今は通えていないけれど研究室に席はある。

途中、就活で落ち込んでいる時、気晴らしに旅サークルにも入った。そこでやりとりをしてなんとなくよいなと思っていた男性とも仲良くなった。会う前のやりとりでカンジがよいなとちょっと恋心抱いたかな。大阪市住之江区在住瀬戸わんたんことシャンクスこと笠倉太一さん。スクリーンショットを取るタイミングが絶妙で、二人の間のDMで良く笑ってやりとりをした。感覚が似ていたのかも。他のメンバーの中で嫌いな人も同じだったし、たぶん、うん、本当に感覚が似ていた。

でも、実際に彼に会ったとき、おもしろいくらい秒殺瀬戸わんたんに落胆した。ネット弁慶だし、なで肩でひ弱そうだし、事前に送ってきた写真もウチ以上にフォトショ芸人だった。

三田会の人がJGCにいたから、なんとなくちょっと聞いたらすぐに学歴も印象操作していることもバレた。ショーンKかよ。純くんに連れられて、JGCに行くから、一流人脈と触れ合っていていたから、どんな人でも一度リアルに会えれば、ああいうハッタリを見破るのは簡単。瀬戸わんたんも虚勢はらなければいいのに。

でも、反省点もある。瀬戸わんたんとは、DMのやりとりが長すぎた。うっかりした。向こうにも愛着がでてきてしまったみたい。学歴印象操作のことから、気まずくなって、やりとりが長かった分、瀬戸わんたんが激高して、ウチの個人情報までいろいろ漁って、ウチがいない場で悪口言い始めた。全部あいつが最初。ウチは悪くない

裏での陰口は結構ダメージあったけれど、瀬戸わんたんのやり方は稚拙だったから、うわさも長続きしなかった。それに、対面で会えれば負けない。言い合いにも一歩も引かない知恵もついた。瀬戸わんたんの自称論破はへそが茶をわかす

瀬戸わんたんだけじゃない。誰とやりあっても一歩も引かない。若いからってなめられない。

はったり瀬戸わんたんとのいきさつがあってから、ハンドルネームを「サオりん」から「けうけむ」に変えた。「由来は?」と聞かれることはあるけれどいつも「なんとなく」と誤魔化している。でも本当は、区切りで変えたかったことと、「稀有に煙いヤツ」っていう自戒をこめて付けた。ウチ、意外とすぐに忘れちゃうから。煙たがられても嫌われてもいい。自分を譲らない。みんな付和雷同するから、それへのアンチテーゼ。

あの時、純くんと下手離れるよりも、割り切って人との付き合いは、気持ちを取られないように、必ず自分がトクになるようにしようと決心して、いまでもたまに会うのはたぶん正解。ライフタイム・ダイヤモンドまであと少し。

純くんのおかげでいろいろと割り切ることができるようになった。SFC豚のまま甘えさせてもらって、それをどんどん広げて、利用できるものはする。でもまた高校の時みたいに色々陰口言われたらシャクだから、邪魔するものは叩き潰そう。

この間のKULは、まともな社会人にみえたキモマ砂原がよりによって口ひげ指摘してくるからちょっと逆上しちゃった。あれはズルイ笑。だって、JGCの紳士たちは容姿に関して決して悪くいわないから甘やかされていた。弱点だった。

純くんには気づかれなかった口ひげ。純くんはそういう細かい所までウチをみてくれていないのかな。でもみんなの前でいうなんて、キモマ砂原はこの3か月で会った中で一番嫌いな人認定。もう会うことはないだろうからいいけれど、けうけむスピリットは忘れない。

そういうふうに厳しい陰キャってぜったいにモテないし、本当の意味では人にやさしくしてもらえない。人に言われなくてもわかっている。ゲス乙女と言われていることも知っている。でも後悔はない。ウチはウチ。私以外私じゃないから、やりとりでは絶対に損しないことと負けないこと。それが一番大切。いつもそう思っている。

(おわり)

てか。結局、砂原もけうけむも俺イズ俺、という同じ信条になっていてw

※※フィクションです※※

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