ジョイフル (8)

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※※フィクション※※フィクション※※

急に真顔になったから何かと思ったら、夕方、ヤブローさんから聞いた話だった。ただ少し切り口が異なっていた。

「いや、口止めしても、私、この話を、複数個所から聞いたから、すぐに出回ると思うけれどね。はじめは中のひとからだったのよ。」

中のひとって、やっぱり、エーエヌエーっていいます?」

とゆらゆらさんが品のある茶化しをした。すぐにハラトビさんは理解して、

「いや、彼は、古いひと、やっと、国際線が香港飛び始めた頃、福岡にいて、そのあと、発券課にいったの。その頃からの付き合いだから、アナでもなくぜんにっくうだね。ははは。酔うと、にっぺりになるよ。ははは。

それでね、今は一応管理職で、管理職だけが見れる社内メールがあって、ユーチューバーが重要顧客の肖像権も侵してしまったことと、そのお客さんが怒っていること、あと、そのユーチューバーの周りの人って、ずい分前からラウンジでのお行儀もあまりよくない、と言われていたみたいで、結構、問題視されて、警告をだしたんだって。青としても、やはり問題だし、利用者のそういう行為は排除したいというのが本音みたい。

笑っちゃうのが、ユーチューバー(無料動画視聴サービス動画提供者)って書いてあったんだって。まだわからない人もいるみたいね、えらーい人だと。

それで、社内的に、そういう規約違反や迷惑行為を見つけた時の、対応の仕方訓練をしなければならない、ということで、その訓練案を練るプロジェクトができたらしいのよ。それで、たとえばどのタイミングで警察を呼ぶか、とかチェック項目も決めたらしいの。客だから警察なんか呼ばれないだろうなんてもう甘いのよ。あ、ここの内部の話は内緒でね。警告が出たと言う話は、たぶん、すぐに出回る。もう知ってる人結構いると思う。」

「えっ。それを、ハラトビさんに教えてくれるってすごく信頼されているということですね。」

「うーん、あかあおさんは、わかると思うけど、まあ、信頼と、俺がマイラーというか、実際にステイタス持ちとよく交流しているのを知った上で、うまくけん制する意味もあると思うけれどね。だから、真髄の、さらにコアな部分は俺にも言わないでしょう。クビかかるもんね。そんなこんなで、紳士協定の持ちつ持たれつ的な。まあ、でもそれだけ問題になっているということだろうということよ。」

「動画撮影が問題なんですかね?それともラウンジ?」

とくぅさんが尋ねると、

「お客さん同士のトラブルになる行為かな。スイートラウンジも結構目に余る人いるからね。」

と答え、ハラトビさんは続けた。

「それで、トラブル発覚時に、対応がある程度揃っていないと、また苦情になるし、社員の安全も守れないから、トラブル対応訓練を現場中心に実施したいんだって。結構本気で取り締まりたいんんだろうなって思ったんだ。そこにこの間のCAへのわいせつや、盗撮でしょう。ちょうど良いタイミングなのかな。」

「いろんな意味で改悪もありえるのかな?」

とJET君がぼそっというと、全員が、そうだよなー、という顔をしてうなずいた。

俺は、ついさっき、ヤブローさんに話を聞いたし、警告をもらったトラザンさんと言う名前まで知っているけれど、今ここで話をしてよいモノかかなり悩んだ。それで、今この瞬間は初めて聞いたようにしていようと思った。どうせすぐに話は回ると言っていたし、ヤブローさんとの約束があるしね。

「警告ってマイル、ぼっしゅーとかな?」

とめんちゃんがやさしい声で言った。

「うーん、それだけで済めばいいけれどね…。」

とハラトビさんが答えたところで、店員さんから飲み放題のラストオーダー・タイムアップの連絡。延長するかどうか、きかれたけれど、JETくんが、

「あっ。すごく楽しい会だったのですが、すみません、明日、早いので、わいはこれで失礼します。また、今度はウエスト会ある時にでもお願いします。東京組のみなさん、今日お目にかかれてよかったです。」

と、お辞儀しながら言った。同時にめんちゃんも、「僕も今日は帰ります。」と言ったので、

「お忙しいのにありがとうございます。」

と言い、精算をお願いした。タイミングもあったので、ここでお開きになった。

JETくんとめんちゃんは急いでいたようで、小走りに駅に向かった。残りの4人はゆっくり歩いて駅に向かったが、ハラトビさんが、

「ゆらゆらさんは明日鹿児島ですよね…。ゆらゆらさんももう1泊あるなら是非と思ったのですが、くぅさん、あかあおさん、明日の夕方から空いてませんか?大阪から来る人との集いがあるのですが、よかったら来ませんか?ちょっと遠いですが、ヒルトンで広い部屋もらえているのでそこでさくっと。準備はこちらでするので、会費は2000円で、飲み物と軽食は用意しますから、手ぶらできてくださいの会です。今のところ、4人なんですよ。」

え?スイートオフ?と一瞬けうけむの悪夢がよみがえったが、くぅさんも一緒なら安心だし、メンバーを尋ねてから、行く行かないを決めるのも失礼かと思ったので、お邪魔することにした。

ゆらゆらさんは、翌朝早いので、と言い、1次会で引けた。丁寧にお礼を言い、再会を約束して別れた。残ったハラトビさんとくぅさんと俺の3人で「じゃ、軽くもう1杯だけ行きますか。」とぱっと目についたビアバーに入った。

そこで、ハラトビさんが、

「あかあおさん、KL、なんか災難でしたね。まあ、その場に居なかったので、何とも言えませんが、その後の言われよう見てると、どっちが変なのか、ってすぐわかりますよ。20年前から同じですよ。お相手のかた、僕は絡みもないし、会ったこともないですが、わかりますよ。パターンとして。でも、言わぬが花ですよ。エラそうに言って申し訳ないですが。」

といきなり切り出した。え、そんな初対面のひとまで知ってるのかと思ってちょっと驚いた。

「お見通しですね。」

とくぅさんが言い、

「今日のメンバーみたいな人ばっかりだったらいいんですけれどね。」

と言い、3人ともビールを飲み干した。

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