俺はオフ会のために海外に行く (9)

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Wifiも使えるので、ラウンジで、すぐに、くぅさんにLINEをしてみた。もちろん、こっそりと。

けうけむさんって知ってます?

即レスが来た。

「あー、かずちゃんともめたよね。ぱろんさんを操って。大学院生だっていうけど、どうも、休学しているっぽいよ。学校行ってるの見たことないし、なんでも即レスだし、いっつもヒマ誰かが出かけると言うと、ちまちま買ったアビオス使って勝手に合流するみたいだし。就職がうまくいかないみたいで、ひがみっぽいんだよね。若い子の悪口嫌だけど、関わるの難しいね。赤青さん、さっそく洗礼浴びてますか?」

「いや、なんと言うか。まあ、今日の夜のスイート・オフ会までなので、がんばります。」

「がんばってください。飲みすぎ注意ですよ。思わずぽろっと話すとすぐに匿名掲示板に書かれますから。フランソワーズさんは、そういうことはしないかな。ただ、対面だとめっちゃごり押ししてくる。断れない雰囲気を作る。」

「わかる。ラリッパさんは意外と普通。あと、ヤブローさん、知ってる?なんか合流してるんですよ。」

「え?まじか。赤青さん、初海外オフでメンバー濃すぎですね。」

「濃すぎか…。教えてくれてありがとう。頑張りますわ。」

と言った後に、ANAでもらったスタンプをつけて会話を閉じた。

ラウンジは勉強の話や、台北のことを話した。さっき部屋で話したような、誰に注意しろ、というような話は余計なお世話だしね。

けうけむさんは、ここでもすごい食欲で食べ物を何回もお代わりしていた。これじゃあ、痩せるのむりだよね。太るだけだよね、と思った。ただ、そんなことは言わない。他人だもん

ひとつだけ、あれ?と思ったのは、フードを取りにいくときに、けうけむさんがスマホをテーブルに置いていき、画面が見えてしまったんだけど、それは、あの匿名掲示板の

【噂噂噂】思いっきりシェア!無礼講 vol.3【マイラーの実像】

というスレッドに、コメントする状態になっていたことだった。俺、航空になってからはやってないけれど、テツのときは専ブラいれるくらいのヘビーユーザーだったから。チラ見で判断できる。やっぱりもしかして、カキコしてるの?要注意だ。

スイート・オフは、思っているほどいやなこともなく時間が過ぎていった。さすがラリッパさん。インターナショナルなおもてなしに長けている。ルームサービスも上手に頼んでいた。オフから合流した$honさんも口数は少ないが、常識的な振る舞いをする人だった。もともと、ラリッパさんと$honさん、高校の時から仲良しなんだって。

もちろん、全員でカンパイ画像を同時テロのようにツイッターにアップした。パッとみたら、俺と、フランソワーズさんへのふぁぼが多かったようだ。ラリッパさんは、この日は鍵アカにしていたからあまりふぁぼは集まらなかった。

「いやー、KULはディン活するにも、あんまりイケてませんからね~。やっぱり本場。赤青さん、今度、香港で行ってみてくださいよ。」

ん?本場はやっぱり台湾だろ?ちがうの?でもまあいいよ。さっきのけうけむさんに比べればまし。けうけむさんは、1990年代生まれの集いのことをぼつぼつと話していた。趣旨としては、自分は同年代と付き合うよりも、年上といるほうが楽しい、今の方が楽しいということだった。その割には笑顔もあまりなかった。

ルームサービスの代金もあるし、ドリンクも準備してくれていたので、俺が、

「あの、ラリッパさん、負担していただいていますよね。精算は?」

と尋ねたら、

「いや、いいですよ。ここはコーポレートの契約あるし、経費で落とせますから。初回はみなさんにそうしているんですよ。赤青さん、さすが、ちゃんとした会社にお勤めなだけある。気配りすごい。あれですよね、うちと取引あるL社さんですよね?」

とラリッパさんが答えた。やめてよ~。会社の名前、なんでばれてるの?てか、やっぱ、フランソワーズさんも信用できないってこと?けうけむさんも気づいちゃうかな?

「あれ、やはり同業の方ですか?プロフ拝見してそう感じていたんですけど。」

「いや、商社なんですよ。ずっと食品畑です。出世できないグループですよ。ははは。今は食用油担当なんですけどね。わかりますよ。浜松町で、食品関係ということはもう噂出回ってますから。でも社名まではやはりね。みんなそこまではさらしたりしませんよ。そのあたりは大丈夫。」

ラリッパさんは続けた。

「いや、商社なんで。なんだかんだツイッターでもつながったら、仕事に関係ある方もいそうで。しがらみできたらいやだなって。だから男性はあまりフォローしないようにしてるんです。気休めですけれどね。若い方は、今、KL人気なので、お役にたてることもあるかなーって。」

うわ。ってことは、商社のMじゃん。エリートじゃん、ラリッパさん。俺、新卒で入れなかった会社だ。さすがカンザス生まれなだけあるな。もしかして、帰国子女なのかな?かっこいい。それいに意外と思慮深い。

「おー、ってことは、ラリッパさん、仕事でもご縁あるってことですよね。これをきっかけに今後もよろしくお願いします。俺は、総務のほうなので、直接的に仕事でご一緒させていただくことはないと思うんですけどね。」

$honさんが、

「あれ、赤青さん、年代同じ位ですよね?柿原と同期かな?」

「柿原って柿原聡?いや、めっちゃ同期ですよ。柿原は今福岡です。」

「カッキーは俺ら高校の同級生だったから。大学も一緒だし。長いよ、つきあい。」

えー。もしかして、都立H高??超優秀じゃん。そこから大学も一緒って、東大じゃん。うひー、俺、正直、国立と政経にはコンプレックスあるんだよ。でもすごいな。こんなところでつながるなんて。共通の知り合いがいるとなんとなく安心するな。そういうものだよな。

そんな風に話していると、フランソワーズさんが、

「あ。ヤブローさんあと5分くらいで下に着くみたい。バクテー行ってきます~。お先に失礼します。お片付けとかしないままですみません。手だけ洗わせてもらおうっと。それじゃあ、明日、赤青さんは、ランチで。楽しみにしてますね。ラリッパさんも$honさんもありがとうございます。けうけむちゃんは気を付けて帰ってね~。またね~。」

と言いながら立ち上がった。

「あ。片付けもありますよね。鼎泰豊もごちそうになったし、ここまでごちそうになって。せめて片付けでもしなきゃ。」

と当たり前のことを俺が言うと、$honさんが、

「いやー、大丈夫。今日、俺がここ泊まります。ラリッパは帰宅するけど。それにこいつさびしがり屋だから、こうやって、人々が来てくれるのがうれしいんですよ。実は嫁に逃げられちゃってるしね。ははは。それに片付けはホテルでやってもらうし。赤青さん、ラリッパともども、これからもよろしくお願いします。」

ラリッパさんは、「おいおい」と言いながらも、古い友達が言う軽口は受けとめていた。うん。大人になってからできる友達っていいかも。それに共通の知り合いまでいるなら安心。やっぱり、誘ってもらってよかったかも。

会社の話になってからけうけむさんは言葉を発しなかったけれど、スマホを隠しながらなにか操作したのを俺は見逃さなかった。

フランソワーズさんは、結構ご機嫌だった。俺も手を洗いたかったので、すれちがったんだけれど、

「油断大敵。さっきのスマホ触ってたの見たでしょ?」

と小声で言ったのは驚いた。よく見てるわ。けうけむさん、四面楚歌じゃん。みんなお前を良く思っていないよ。大丈夫か?

けうけむさんが、どうやって、ホリディインに戻ったか、それは俺は関わらなかった。俺はもう十分にやれることをやったと思うし。一緒に部屋を出て、変に思われても困るから、フランソワーズさんが出た後に、すぐ、あえて時差を作るように先にスイートルームを後にした。

ルメリに戻ると、くぅさんからLINEが来ていることに気付いた。

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