俺はオフ会のために海外に行く (11) ~ 最終回

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そのあと、リッツに行くまでは、ヤブローさんと一緒に居ても、話したり、話さなかったり、あまり、気遣いしないですんだ。そういうのありがたい。リッツに着いて、土曜のランチということで、麗苑は結構混んでいるようだった。

すぐにフランソワーズさんを見つけて、おつかれさまー、と言おうとしたら、その横になぜかけうけむさんがいた。フランソワーズさんの顔はこの2日間で一番曇っていた。

「フライト、遅いのにチェンジできた。ここ来てみたかったんです。なかなか一人じゃこれないし。

悪びれる様子がまったくなく、当然だと言わんばかりの顔でけうけむさんが言った。

オーバーオール腰みのからの今日ははっきり言ってジャージ。下半身のラインが結構出てしまうタイプで、どう見ても、けうけむ部屋ちゃんこ番みたいになってる。有吉みたいにあだ名つけていいなら、ちゃんこけうけむで決まり。

だめだ、俺、またビジュアルにプッシュされてる。負けちゃダメ。

ヤブローさんが、さっと顔色を変えて、

「あのさ。はっきり言うけど、呼んでないけど。一人でテーブル作ってもらうつもり?会計も割り勘だよ。公平に割り勘だよ。甘えないでよね。」

「こわっ。」

「こわっ、じゃねーよ。おめーのほうがこわいよ。呼んでないし、来たいとも言われてないのに、なんでいきなり凸ってきてるの?お前、鍋女か?いたんだよ。学生の時、勝手に熱あげて、俺の下宿の前で土鍋抱えて帰り待ち伏せされたの。それと同じじゃん。」

ちょwwwヤブローさんおもしろすぎ。なんでここで鍋女の話がでる?ウケる。でも、けうけむさんはどこ吹く風で、俺にロックオンして、満面の笑みで言った。

「赤青さん、来たら、っておっしゃいましたよね?昨日、カクテルタイムの時に。それでフライトもチェンジしたんですよー。」

は?なんだ?こいつ。意味わからなさすぎる。アスペかよ、アスペ。フランソワーズさんを見ると、さっきの曇った顔から怒りの表情に変っている。

「いや。ごめん。俺、カクテルタイムでその話一切してないし。それに、そんなこと今言われたら、まわり信じちゃうパターンあるでしょ。」

「だって、ほんとに誘ってもらったしぃ。もっと話したいから、ランチ、って。」

といって、ちゃんこけうけむが精いっぱいの上目使いで、口を半開きで首をかしげながら俺を覗き込んでいる。じりじりと近寄ってもきている。これ勝手に彼認定モードの顔だ。きもっ。ほんと、俺、もっと話したい、とか言ってないし。過去ログ漁って掘ってもらっても証拠ないし、でてこないし!!

俺、脱力MAX。なんだ、こいつ。この一年で会ったマイラーの中で最強最悪。今まで、たいていのことは飲みこんできたけれど、あの札幌のお局と同じ。都合悪くなると、不細工なくせに自称キメ顔で覗き込んでくる。実は砂原さんのこと気に入ってるんです、だから砂原さんワタシの味方よねモードでくる。きもっ。女のチカラとか働かないから!札幌はおばさんで、そんなことされると、顔のしわが良く見えて、ぎょっとするけれど、ちゃんこけうけむはなんだ、顔近づけられると、口ひげ1本剛毛が見える。これ、5ミリくらいあるぞ。だめだ、さらにチカラ入らない。なんで抜かないの

「みんなわかっているんですよっ。でもあたくしたちは気持ちを抑えて、昨日、けうけむ、あなたを甘えさせてあげたの。よろしくって?趣味が同じでも、それ以上の甘えはだめでしょう。何さまのおつもりかしら?あなたのなさっていること、みんな存じ上げているのよ!ぱろんさんを利用するのもいい加減になさいな。」

うわ。フランソワーズさんが、お蝶夫人みたいな言葉遣いになってる。だからマダムっていわれているんだ。やっぱり育ちはいいのかな。

©エースをねらえ! お蝶夫人。竜崎麗香。岡ひろみと初ダブルスで外野のヤジに怒るの図。

いやいや、そんなことよりも、今のピンチを乗り切らないと。KOO1008こと赤青だいすき。マイルの世界に入って最大のピンチ。

「もう一回申し上げますわよぉ。あーたは、あたくしたちとたまたま趣味が同じで集っただけの一人の若者。それも所在のないどちらかのだーいがくいんせい。でもねー、年齢も関係ないのよぉ。そこじゃないのよぉ。あーたの、甘えや、うそや、こざかしく人を利用することを申し上げてるのよぉ~。もう恥を知りなさい~。」

うわ。お蝶夫人っていうよりもこれデビ・スカルノじゃん。これ、YUURIママさんが、ジャッキーステーキで俺をぶった切ったときに似てる。けうけむさん、つらいだろうなー。俺、つらかったもん。

うっせーよ、ばばあ。年増と話してないし。お前、うちの母親より年上で男とちゃらちゃらしてバカだろ。今日はやさしい赤青さんが呼んでくれたんだよ。」

ちゃんこけうけむ、全く悪びれない。今までの中で一番大きな声でタンカ切ってる。言いながらさらに俺との距離を縮めて寄ってくる。10-ゼロで相手が悪いと言わんばかり。さすがの俺もキレた。ぷつんという音が聞こえたくらいだ。

呼んでねーし。ないない。そこまで言うなら、俺も言うよ。俺、赤青だいすき、航空の趣味では一度もキレたことないけれど、前の趣味のサークルでは、結構うるさいタイプだったから。言うよ。まず、これなによ?俺のスーツケースっしょ。なんで、しつこいわけ?俺、なんかしつこくした?はぁ?言ってみ??なんで掲示板にさらすわけ?」

情けないぞ俺。スクショを示すためにスマホを出す手が怒りで震えてる。平常心平常心。深呼吸。

「それ、私じゃないしぃ。赤青さんのお部屋で素敵なスーツケース見つけたから、ぱろんさんに『見て~♡』って送っただけだし。掲示板に書かれてるならそれはぱろんさんがやったんじゃん。知らないよ。」

「は?シラ切る?またぱろんさんを利用する??

それに、ステキってウソだろ。これイオン2倍ポイントの時に買ったノーブランド4,800円税抜のやつだし。いやトップバリュー、TVブランドだし。ステキっていうのはリモワとかを言うの?フラで買うリ・モ・ワ!!わかる??

あとさ、言うけどさ、匿名掲示板のスクショは証拠にならないし。昨日、けうけむさんが言ってたことあれ、全部、バカ丸出しね。はっきり言って。ソースは掲示板って一番アタマ悪い人がいうことだし。かっぺな。かっぺ。かっぺ丸出し。特定できないし。言い回しなんかいくらでもプリテンドできるし。プリテンド、成り済ます、って意味だよ。知ってる?

それに、人の悪口もやめろよ。YUURIママさん、そういう面倒なことしないし。若いんだから、悪口言うヒマあったら自分磨けよ。

それになにより、言っちゃうけど、一番気になるのはさ、悪いけど、口ひげ1本出てるから。近寄ってくるから見えちゃったし。俺、今、毛抜き持ってたら、この場で抜いてあげたいくらいの立派なひげだし。なに、それ、幸運のおまじない?それレベルで長いし。そういうの気を遣うことから人間関係作っていくんじゃないの?気を遣わないから自称ブス アンド リアルブスじゃないの?

一気に言って俺、肩で息しちゃった。フランソワーズさんとヤブローさんが、うんうんとうなずいていたからまんざら変じゃないのだろうけど、口ひげのことまで言わないでよかったかな?ちょっと反省。でもその反省もすぐに消えた。

「うっざ。きもおやじ。結局、若い人に嫉妬ですか。そうですか。いつもあんたたちそうだよね。偉そうに。結局若いからってバカにしてる。はぁ~。それで、金払い悪いおやじって意味ないじゃん。説教までとか臭ってきそうだわ。結局、若さに嫉妬だよ。口出さないで金出せよ。年金詰むぞ、なくなっちゃえばいいんだよ、このやろー。」

と言った。その時、手で口元を触りながら、1本口ひげを探し当てたらしくその時は「えっ」って顔をしたのを俺は見逃さなかった。爪でつまんで抜こうとしてるみたいだけど、指が太いから上手につまめないみたい。本当にひげがあること知らなかったんだ。それにも俺驚愕。顔にでちゃったよ、ビックリ具合が。それで、俺をにらんでから、「つまんねーじじばば。はいはい、若者が悪いんですよ。ゆとり、さとり。それでも嫉妬されてつらいつらい。超高齢者社会、少子化ばんざーい。」と吐き捨てて、その場を去っていった。後姿もやっぱりちゃんこけうけむだった。

「赤青さん、よく言いました。しばらくは嫌がらせあるかもしれないけれど、もうみんな知ってるし。俺ら証人だし。あっちを信じる人はおかしいし。」

「私、赤青さんのファンになります。決めましたぁ。」

とヤブローさんも、フランソワーズさんもおおむね好意的な反応だった。そして、一息ついて、予約してある席で、3人で楽しく食事をした。ちゃんこけうけむの話題はでなかった。フランソワーズさんは、じつは、ハワイアンキルトをやっていて、今度、東京ドームでのイベントがあるから、来て、と誘ってくれた。

食事は、アラカルトで頼んだ。ハニーチャーシューがおいしかったな。支払いは、俺が全部するべきかな、と思ったけれど、フランソワーズさんが、「部屋づけする。ポイントももらえるし。今日はお姉さんに甘えて~。」と言ってもってくれた。ありがとう。今度お返ししなきゃ。

その夕方には、けうけむさんから俺はブロックされていた。別にいいや。みんなと仲良くなんかできないし、確かに後味は悪いけれど、仕方ない。ブロックされた、とか、前だったらすごくショックを受けたと思うけれど、全然ショックもない。むしろ、あんまり、人に厳しく言ったことがないのに、それも初海外オフでキレちゃって、ちょっと俺反省。札幌お局とけうけむさんがオーバーラップしちゃったよ。そこは申し訳なかったな。

その日はゆっくりランチをとって、ひとりでカクテルタイムを楽しんだ。そのあとは、地図をみながら新峰バクテーに行ってみた。もっと苦くて骨骨してて食べにくいものだと思っていたけれど、身体にしみいるやさしさがあった。海外一人旅の醍醐味だ。ふらっと出かけて、さくっと好きなものを食べる。

今回は、後味は決して良いとは言えないけれど、怒りや嫌悪を表現できてよかったのかもしれない。札幌お局にも言うことはしっかりと言おう。決めた。

最終日は、エクスプレスのほぼ始発に乗って、空港に向かった。成田着のフライト、家まで遠いけれど、羽田着だと帰宅がぎりぎりになっちゃう。ゴールデンラウンジで軽く食事をしながら、くぅさんにLINEをしてみた。

「さっそくないことないこと書かれていますね笑笑笑。」

「そっか。でもいいよ。何書かれてるかも気にならないや。別に、信じる人はそれだけの人だし。」

「ですよねー。共通の趣味で集って、人間関係こじらせるってくだらないですよね。」

「それな。本当それ。くぅさんの言うとおり。今回、一人フォロワーさん減って、ブロックまでされたけれど、他に会った人は意外と気の合う人たちだったから、まあ、収支でいうとプラスかな。」

「それならばよかった。気を付けて帰ってくださいね。」

「ありがとうございます。では、ゲートに向かいまーす。」

くぅさんとのLINEをしているときに、みどりからもLINEが来た。ゴスペルの飲み会の画像がついていた。みんなすごくデブだった。でもみんな満面の笑みで酔っ払っていることもあって楽しそうな画像。けうけむさんも発散できる場所があればああならないだろうに。

「こうちゃん、まだ羽田?ちがうか?今日帰るんでしょ?迎えに行こうかと思ったけど、激烈二日酔いで無理ゲー。ごめん。気を付けて帰ってきてねー。」

ヤブローさんほどの愛妻家にはなれないけど、みどりはみどりで十分にイイ奴だな。迎えになんてこなくていいよ。ジュークを絶対にどこかにこすっちゃいそうだし。俺が運転することになって飲めなくなっちゃうから。

「その気持ちだけれうれしいよ。これから帰るところ。じゃ。」

と返信して、スマホの電源を落とした。趣味だからこそ、やっぱり、年齢関係なく、お互いを大切にしたうえで、主義主張持つ方がいいな。年齢や社会的地位みたいになかなか変えられない物理的なもので、先入観を持たないほうがいい。だめなものはだめ。我慢の必要もない。逃げることができる趣味の世界だよ。気軽にいかなきゃ。当たり前なのに、非日常の環境でやっと気づくなんて俺もまだまだかも。まあ、とにかく、けうけむさんとは二度と会いたくないわ。絡みたくもない。そういうくらいの苦手な人、存在して当然だよ。別世界で生きているだけのことだよな。それが分からなくなりがちなトリックがある。共通の趣味は万能じゃないってことを再認識した初海外オフだったわ。

ゲートに向かって、荷物をXrayに通して、待合に入ろうとしたら、ぴぴって異なる反応をした。そして、あらかじめ用意してあった、「C」と書いた搭乗券に差し替えられた。インボラだ。ヤッター。俺、多少、言い過ぎちゃったとココロがちりちりしたけれど、これでよかったってことだよな。うん。ゆっくりビジネスを堪能して帰ろう。

おしまい。

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